夜行バスで甲子園観戦ツアー
マウンドの上の青春
ムラヤマは大の野球好き。
野球ならばセ・リーグ、パ・リーグなんでもありだが、その中でも特に、高校球児が日本一を目指して青春の汗を流す甲子園は大好物だ。
某少年漫画誌ではないけれど、愛と努力と友情はムラヤマの最も好きなものだったりする。
勝って泣いて、負けてまた泣いて、その涙は試合の勝利や敗北といった瞬間的なもののために流されるのではなく、きっとそれまで努力し、夢見てきた、長い長い時間のためのものだから。意味がある。それもとてもとても深い。
あれは夏の甲子園が真っ最中のときのことだった。
クーラーをガンガン効かしている部屋で、アイスを片手にテレビに噛り付いていたムラヤマは、お気に入りの選手が、燦々と降り注ぐ日差しの中で汗を流しながらバットを振っているのを見て、ふと応援している自分がこんなに快適に過ごしていていいのか、と要らない疑問を持った。
今考えると、自己満足ここに極まりの本当に要らない疑問。
でもそのときの私にとってそれは大きな問題だった。
なぜなら私は右手のアイスをピッチャーの投球に合わせて、バッターと一緒にスイングするぐらい試合にのめり込んでいたから。
つまりはバッターと一緒にマウンドで戦っている気分だった。そんな私がこんな快適でいいはずがない。選手と一緒に汗を流すべきだ。
甲子園観戦ツアー
決断の早さは私の利点であり、そして欠点であると思う。
アイスを食べ終わった頃には、私は今夜発の夜行バスで、東京~神戸行きの夜行バスに乗り、甲子園観戦ツアーに行くことを決めていた。
私も高校球児と同じく青春の汗を流そう、そう考えながら本日5本目のアイスを冷凍庫に取りにいった。
後悔の早さは私の欠点以外の何者でもないと思う。
人が多いせいか、はたまた勝負熱のせいなのか、ただでさえ暑い日なのに、甲子園球場の中はそれに輪を掛けていて、私はまるでアイスのように溶けてしまいそうだった。
汗を拭くのに精一杯で、選手を応援するのもままならなかった。
でも迫力はテレビの画面とは段違いだった。その迫力飲み込まれ、心の中の後悔が段々と、誰かを応援する熱へと変わっていく。感情も体も熱に変わり、その瞬間私は確かに夏と一体化した。
気がつけば、お気に入りの白の帽子もはずし、必死に大声で応援していた。
ゆで蛸のように日焼けして真っ赤になりながらも、一つ気が付いたことがある。
やはり私は甲子園が大好きだということだ。