女性向け夜行バスの出会い
美しく生まれたもの
それはムラヤマが女性向けの夜行バスで出会った少女のこと。
ムラヤマは母とふたり旅を楽しんでいた。
トイレもきれいで、サービスエリアにも止まるし、おしぼりなんかのサービスもあって、ムラヤマは快適に過ごしていた。
その最後尾の列に、その少女はいた。年のころは小学校の2~3年生くらいだろうか。
となりには、母親らしき女性。少女に笑いながら話しかけている。
しかし、少女はニコリともせず、気をつけ!!の姿勢で座っていた。
なんでその子に注目したか、その子は、ロリータな白いレースのたくさんついた服を着て、ぎょっとするような美しい眼鼻立ちをしていた。簡単にいえば、人形のようだったのである。
人を殺す言葉
明け方サービスエリアで、一睡もしなかったムラヤマの横を、少女が通った。
母親は寝ているようだ。ムラヤマは反射的に少女の後を追った。
トイレはすいている。しかし少女はまず鏡の前に立って、自分の姿を見ていた。
「なにをみてるの?」
ムラヤマは声をかけて、少女のとなりの鏡の前に立った。
少女がこちらを見たが、ムラヤマはそちらを向かなかった。
「なにをみてるの?なんか心配なの?」
代わりに見てあげようか?ムラヤマは歌うように言った。少女は困った顔をして、なにかを迷っているようだった。
口がきけないのか?そう思うほど長い沈黙。実際はそうでもなかったのかもしれない。
お母さんが・・・少女はポツリと言った。
「お母さんが、私はしゃべらなければかわいいって・・・」
なるほど。それで話さないわけか。ムラヤマは合点が行った。
「しゃべってもかわいい」
ムラヤマは前を向いたまま言った。少女はびっくりした顔をした。
しゃべってもかわいい、私はそう思う、ムラヤマは少女を見ていった。
少女はうつむいて、なにかをもごもご言った。私はトイレに入った。
出てくると、少女はいなかった。
バスに戻ると、少女と目があった。ムラヤマはおもいきりにやりと笑った。
少女も、かすかに微笑んだ。
それはもう、天女のように美しい微笑みだった。