無意識の現実逃避

ムラヤマは22:00東京~青森行きの夜行バスの中だった。
今日は金曜ともあり、バスの中はアルコールの臭気が漂っている。
車内は禁酒禁煙だ。会社の飲み会のあとバスに間に合うように引き上げて乗り込んだようだ。
1週間の疲れを座席の背もたれに深くし、夢心地になっているオヤジたちが多い。 しかし、まだ座席の半分しか埋まっていない。出発15分前だ。 今日は空いているのか?またはお酒臭いオヤジたちがギリギリ駆け込んでくるのかと思うと心の中でテンションが下がる。 でもこのオヤジたちが日本の経済を支えてきたことを考えるとお酒臭さも少し許せる。
ムラヤマは青森にいるハトコを訪ねてみる予定だ。先日亡くなった2番目の兄と幼少の頃遊んだ事のあるハトコだ。 昔の記憶をたどりながら頭が呆然とした。今週末はどうしてもそこに行きたくなったのだ。何かがそこに行けと言っている様だった。
エンジン音で目が覚めた。少し寝てしまったようだ。ムラヤマの隣には酒臭いオヤジではなく、きれいな丸の内OL風な女性がいた。 心の中でラッキーと思ったのも束の間、彼女はポータブルDVDを取り出し見始めた。
前の座席も女性だ。化粧をしているらしく、時々鏡の反射がチラチラと車内を照らしている。
ムラヤマは隣からかすかに音漏れしてくるDVDを横に夜景を見ることになった。
暗い窓にDVDの映像が見えた。そうなってくるともう夜景よりもそっちの方が気になってくる。
かすかな音漏れと見えた映像からムラヤマがはまっている海外ドラマだということがわかった。
しかも彼がみたシーズン2の先!?DVD熱が再開した瞬間だ。思いがけないフライングはムラヤマのDVD道に反する。
あの内容が思い出される。全く今の自分の心境と関係ない、設定自体共通項が全く無いストーリーだ。 シーズン2の途中で見なくなったのは時間が無いからではなかった。ふと、いつが最後だったのか遡ってみた。もう3週間も間を空けていた。 だからこそ今の自分には必要かもしれない。束の間の現実逃避にもってこいなのだから。